あれこれ日記

趣味の話や哲学のこと

2024-01-01から1年間の記事一覧

2024年振り返り

今年はとにかく、それぞれ別個に始まって違うスケジュールで進んでいたはずの仕事が結果的に重なりまくって大変でした。 そんなわけで、今年は私が関わっている本が4冊出ています。まずは『言葉の道具箱』(講談社)。 『群像』で約3年にわたって続いていた…

【対談】フィクションでマイノリティを描く(「抵抗のためのダイアローグ」第2回)

小説TRIPPER2024年冬号で村野真朱さんと対談しています。村野さんは、クラフトビール漫画『琥珀の夢で酔いましょう』で原作を担当したり、MiNoRi+(ミノリト)で小説「虎態」を寄稿したりされている作家さん。いずれもさまざまなマイノリティにあたる人々が…

【書きました】言語哲学で考えるドラクエ性別論争 ルックスA・ルックスBの意義は(Re: Ron)

言語哲学で考えるドラクエ性別論争 ルックスA・ルックスBの意義は:朝日新聞デジタル ドラクエ3リメイクで少し話題になった「ルックスA/B」表記の話です。それをロバート・ブランダムの推論主義を使って語っているのですが、ドラクエの話でブランダムを持ち…

【書きました】「譲歩的共同行為と共同的コミットメント:高階コミットメント説の試み」

https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/handle/2433/290581 京都大学で出ている『哲学論叢』というジャーナルに論文「譲歩的共同行為と共同的コミットメント:高階コミットメント説の試み」が公開されました。夏に京都大学で集中講義をしまして、そ…

【本が出ました】『認識的不正義ハンドブック』

www.keisoshobo.co.jp 佐藤邦政さん、神島裕子さん、榊原英輔さんといった素敵な面々に私も編者として加えていただいて、『認識的不正義ハンドブック』という本を出しました。 ミランダ・フリッカーさんの『認識的不正義』が飯塚理恵さんの翻訳で(佐藤邦政…

【本が出ました】『女の子のための西洋哲学入門』(フィルムアート社)

www.filmart.co.jp いよいよ本日発売されました! メリッサ・M・シューさんとキンバリー・K・ガーチャーさんが編著者となり、計20人もの女性哲学者を集めてOxford University Pressから出版されたPhilosophy for Girlsの翻訳です。一章も省略せず全訳と…

【書きました】このマンガもすごい! 末次由紀『ちはやふる plus きみがため』

『中央公論』12月号の「このマンガもすごい!」で末次由紀さんの『ちはやふる plus きみがため』を紹介しています。 ちはやふるplusきみがため|BE・LOVE - 読むとハッピーになる - 講談社の女性漫画誌 この漫画は、あの名作『ちはやふる』の続編! 『ちはや…

【ネタバレあり】『ふつうの軽音部』のたまき先輩

41話「輝く日々を想う」、42話「輝く日々が曇る」、43話「輝く日々を走る」、44話「輝く日々を叫ぶ」、45話「その舞台を夢見る」があまりに素晴らしくて、語りたくなりました! [第1話~第4話]ふつうの軽音部 - クワハリ/出内テツオ | 少年ジャンプ+ 『中…

【本が出ました】『言葉の道具箱』

『言葉の道具箱』(三木 那由他)|講談社BOOK倶楽部 少し前に新しい本が出ました。『群像』で三年にわたって連載をしていた「言葉の展望台」というエッセイをまとめたもので、『言葉の展望台』、『言葉の風景、哲学のレンズ』に続く第三弾です。 今回も私が…

【オンライン公開されました】「このマンガもすごい!『ふつうの軽音部』」

先月の『中央公論』に掲載された記事ですが、オンライン公開が始まりました。 https://chuokoron.jp/culture/125660.html こちらは掲載時のブログ記事です。 https://mikinayuta.hatenablog.com/entry/2024/09/17/115856 ちょうど少し前に弟に「『ふつうの軽…

【書きました】「コミュニケーションと意味の占有」(下里誠二・木下愛未(編著)『精神科医療における暴力とケア』3章)

https://www.kongoshuppan.co.jp/smp/book/b651224.html 暴力とケアをめぐるこちらの論集で、「コミュニケーションと意味の占有」という章を書いています。 『言葉の展望台』などでもアイデアとして語っていた「意味の占有」ですが、実は私のなかでは『話し…

『ふつうの軽音部』クワハリ原作、出内テツオ漫画(「このマンガもすごい!」)

『中央公論』2024年10月号に掲載されています。 今回取り上げたのはジャンプ+で連載中のウェブ漫画『ふつうの軽音部』です。この『ふつうの軽音部』、なんと8月28日に「次にくるマンガ大賞Web漫画部門」第一位に輝いたそうです! https://tsugimanga.jp/shar…

【書評】ミランダ・フリッカー『認識的不正義』(『ジェンダー研究』27号)

https://www2.igs.ocha.ac.jp/gender/gender-27-2/ フリッカーの『認識的不正義』(佐藤邦政監訳、飯塚理恵訳、勁草書房、2023年)の書評を書きました。 短い書評なので、基本的には私の視点から認識的不正義やそのなかの証言的不正義、解釈的不正義といった…

Starfield(ネタバレあり)

発売とともに購入したものの、なんとなく一周もクリアしないまま放置していたゲーム。しばらく前に改めてやり直しました。 たぶん前回やったときはこのゲームの楽しみかたをわかっていませんでしたね。Skyrimとかのノリで考えていたから、ふらふらしてたらい…

最近やったゲーム

最近いくつかの、比較的短時間でクリアできるゲームをやりました。レトロゲームが中心。いずれも初プレイです。 『ゼルダの伝説』 いわゆる初代ゼルダです。私が生まれたころのゲームなのでさすがに「昔!」という感じですが、面白いですね。あとのほうはダ…

『へべれけ えんじょいえでそん』

https://store-jp.nintendo.com/item/software/D70010000076727/ サンソフト/シティコネクションから出ているゲーム。1991年(33年前!)に発売されたFCゲーム『へべれけ』に、クイックセーブ/ロードやリバース機能などをつけた移植版です。 へべれけシリ…

映画『モンキーマン』(ネタバレあり)

https://monkeyman.jp/ 先日公開された復讐系クライムアクション映画。かなりバイオレンス満載なので、好みは分かれるかも。もうほとんどのシーンで殴るか蹴るか刺すかしていて、終始血みどろの画面。でもとても熱くて面白い映画でした。 舞台はインド。かつ…

Thomas J Billard & Brian L. MacAuley (2017) ""It's a Bird! It's a Plane! It's a Transgender Superhero!': Transgender Characters in Marvel, DC, and Image Comics"

Carrielynn D. Reinhard & Christopher J. Olson (eds.) (2017) Heroes. Heroines, and Everything in Between, Lexington Books所収 タイトルがいいですよね。たまたま何かでタイトルを見かけて、特に自分の専門とかとは関係ないのに気になって本を取り寄せ…

「ただの気にしすぎ」ではない累積的な害(Re: Ron)

digital.asahi.com Re: Ronの連載「ことばをほどく」で、マイクロアグレッションについての記事を書きました。 マイクロアグレッションというのは、日常のやり取りで見られる些細な言動だけれど、それでもターゲットとなった人々に害を与えるようなもののこ…

藤高和輝『ノット・ライク・ディス トランスジェンダーと身体の哲学』(以文社)

https://www.ibunsha.co.jp/books/978-475310384-3/ すごく面白くて休憩なしに一気に読んでしまいました! バトラー研究やトランスジェンダー哲学で知られる藤高さんのこれまで発表されてきたテクストからなる論集。 バトラー、メルロ=ポンティ、ラカン、サ…

Schuyler Bailar (2023), He/She/They, Penguin Books

https://www.pinkmantaray.com/he-she-they とてもいい本でした。 著者のバイラーさんは大学に入ってから性別移行をした男性。高校時代は女子水泳部で活躍し、ハーバードに水泳の特待生として入学し、性別移行後は男子水泳で泳いでいたというひと。韓国系移…

田澤健一郎著・岡田桂監修『わたしたち、体育会系LGBTQです』

https://www.shueisha.co.jp/books/items/contents.html?isbn=978-4-7976-7449-1 スポーツとともに生きてきた9人の性的マイノリティの人々へのインタビュー本。ゲイのかたが多いですね。 スポーツというと、オリンピック開催中の現在に限らず、やたらとトッ…

南Q太『ボールアンドチェイン』(2)、『ぼくの友だち』

https://shuro.world/manga/ballandchain/ https://shuro.world/manga/%E3%81%BC%E3%81%8F%E3%81%AE%E5%8F%8B%E3%81%A0%E3%81%A1/ 南Q太さんの新刊2作です。そしてなんと、『ボールアンドチェイン』2巻の帯文を書かせていただいています! 私たちの社会では…

『数字であそぼ。』絹田村子著【このマンガもすごい!】

https://chuokoron.jp/culture/125328.html 中央公論に掲載された書評がオンラインでも公開されました。絹田村子さんの『数字であそぼ。』の紹介です。 数学の道を進む学生たちの日常を描くコメディで、数学ネタ、京都ネタ、院生ネタなどが入り混じっていて…

『MCU 比類なき映画スタジオの驚異的な逆転物語』

https://onlineshop.filmart.co.jp/products/978-4-8459-2328-1 倒産間近だった時代から、現在に至るまでのマーベルの歴史を、特にMCUの展開に焦点を当ててたどった本。膨大な数の関係者のインタビューがあって、面白かったです。 ファンタスティックフォー…

マイア・コベイブ『ジェンダー・クィア』(小林美香訳、サウザンブックス)

http://thousandsofbooks.jp/project/genderqueer/ トランス関連のグラフィックノベルの情報を探すとかなり頻繁に目にするタイトルなのですが、いままで読む機会がなく、この翻訳で初めて読みました。 この作品はジェンダークィアである著者の自伝的作品。ト…

『デッドプール&ウルヴァリン』

見てきました。好き勝手やってるライアン・レイノルズが可愛いし、やたらとキュートな犬ドッグプールも出て来ます。2のときも1のキャラがあんまり活躍しなかったりしたけど、今回も1や2のキャラがほとんど出てこないのは残念。私お気に入りのドミノさんとか…

『デッドプール2』

MCU作品はわりと見てるのですが、X-MEN系列はあんまり見てなかったんですよね。いちおう『フューチャー&パスト』あたりまでは見て、『デッドプール』は見た感じ? と考えたら、実は見てないのって『アポカリプス』、『ローガン』、『ダークフェニックス』く…

ペドロ・アルモドバル『ストレンジ・ウェイ・オブ・ライフ』

https://www.hark3.com/strange/# かつてともに過ごし、愛し合っていたふたりのガンマン。25年ぶりに再開し一夜を過ごすが、保安官となったジェイクが追っている殺人事件をめぐって、ふたりのあいだに緊張が生じる。 本作はほんの30分程度の短編で、ふたりの…

斜線堂有紀『楽園とは探偵の不在なり』

「天使」と呼ばれる存在が世界中にいる特殊設定ミステリ。手足が長く、顔がなく、骨のような翼のある不気味な天使が降臨して以来、この世界には「意図していようがいまいが、ふたりの人間を殺した者は天使に地獄へ引き摺り込まれる」というルールがもたらさ…