やっっっとクリアしました! 80時間ちょっとかかった。
『ダンジョンズ&ドラゴンズ』の世界観とシステムを踏襲したゲームで、私はよく知らないけど魔法とかも全部そのままみたいです。
主人公は用意されているキャラクターから選ぶこともできるし、オリジナルキャラを作ることもできます。私は当然自分に似せて体の大きな女性主人公Nayutaを用意しました。名前はカタカナでもよかったらしい、とあとで気づきましたが、スーパードクターのKAZUYAさんみたいでかっこいいから別にいいですね。
物語は、マインドフレイヤーという、ひとの脳を吸ったり、ひとの脳に幼生を植え付けてマインドフレイヤーに変質させたりという、連中がいて、それにさらわれて脳に虫を入れられてしまうところから始まります。一緒に船に捕えられていた人々と協力して脱出するものの、虫は頭に入ったまま。けれど不思議とマインドフレイヤー化はしておらず、主人公は同じような境遇の仲間たちと治療の方法を探しながら冒険をすることになります。そしてだんだんとバルダーズゲートという街の存亡を賭けた大きな戦いに関わっていきます。
このゲームは、ストーリー的には膨大なサブクエストや分岐がありつつ、それでも大きな流れとしてはまとまっている感じで、その点では「どこに行って何をしてもいい」的な自由さは少なく、むしろ昔ながらのファンタジーRPGという感じでした。むしろやたらと自由なのは街中での行動や戦闘の進め方。普通に戦ってもいいし、高所に誘き寄せては突き落としたり足場を崩したりしてもいいし、水浸しにしたところに雷を落としてもいい。説得で戦闘なしでどうにかできる場面も多いです。複数のクラスを掛け合わせられるキャラビルドも面白くって、吸血鬼ローグ(盗賊)のアスタリオンというキャラにバード(吟遊詩人)になってもらって、歌って踊れる暗殺者盗賊になってもらったりしていました。
キャラクターも魅力的でいいですね。大柄でムキムキで天真爛漫な可愛らしい女性カーラックさんや、どこか影がありつつたまにきついことも言うシャドウハートさん、ねっとりとした口調で基本的に嫌なことばかり言うんだけど「お前、本当は寂しいんでしょ? 怖いんでしょ?」みたいな気配を迸らせているアスタリオンあたりがお気に入りでした。というか一週目はこの三人とずっと行動してた。
このゲームはクィアフレンドリーなのも発売時に話題になっていました。作中でも多くはないけれどNPCの同性カップルがいたりしますし、なかにはかなりメインストーリーにみっちり関わってくる女性同士カップルもいたりします。仲間たちとわりと性的なシーンがあったりするのですが(日本語版だと規制が入って股間に葉っぱが一枚つくせいでギャグシーンみたいになるけど)、これも性別の制限はなくいろんなひととロマンスをしたりできます。キャラ作成時にノンバイナリーにしたら代名詞もtheyにしてくれる。
キャラ作成はけっこう面白くて、「ボディタイプ」と「ジェンダーアイデンティティ」を別個に選ぶんですよね。なので身体的な移行をしていないトランスのキャラとかも作れたりします。
まあどんなふうに作っても人々の反応も振る舞いも特に変わらないと思うのですが、それもいいですよね。現実の世界のひとたちは性別への執着が強すぎて疲れることが多いので、「そんなのどうでもいい」みたいな世界は気が楽です。この点では、「性別はあるが選ばれた一部の個体以外には生殖能力がなく、性器は性行為を楽しむためだけに用いられる」という種族がいたりするのも面白いですね。
戦闘が難しい場面もたまにあるのですが、全体的にはデフォルト難易度で「多少詰まってもじっくり対策を練ればクリアできる」くらいのバランスで、ちょうどよく感じました。吟遊詩人がイメージに反して強い気がする。
シャドウハートさんと交際していたのですが残念ながらロマンスイベントを取り逃がしていて、少し悔いを残しながらのクリアでしたが、これまでの冒険の総決算と言えるようなラストバトルに、すべてが終わったあとの宴の余韻が溜まりませんでした(骸骨みたいな外見のひとが幹事をしてくれる)。
一週目はドラウ女性のウィザードNayutaでプレイしていたのですが、いまはエルフのノンバイナリー吟遊詩人ナユタでプレイ中です。あちこちでとりあえず演奏している。
【追記】
本作には(ほぼ)明示的にトランスジェンダーのキャラクターがひとり登場します。主人公のひとりであるシャドウハートさんのかつての親友ノクターンです。
シャドウハートさんはシャーという神を信仰しているのですが、物語が進むにつれて自分自身の信仰に、そしてシャーに仕えるために奪われた自分の記憶と家族に向き合うようになっていきます。その結末はプレイヤーの選択肢によって大きく変わるようなのですが(極端な場合だとシャドウハートさんはある時点で永久に離脱するとか)、最終的にシャー教徒の拠点である悲嘆の館に行ったときに、この親友ノクターンさんと再会することになります。
と言っても、向こうははっきりと覚えているのに記憶を奪われているシャドウハートさんは思い出すこともできない模様。いろいろと切ないやり取りがあるのですが、そのついでにノクターンの日記を見ると、過去のふたりの姿がわかるのですよね。そこでは、「自分自身を女性と感じ、鏡のなかに女性の姿を見出す」と語るノクターンが、過去に望まない名前で呼ばれる(デッドネイミングされる)たびにシャドウハートに助けられてきたというエピソードが語られています。つまり、シャドウハートさんはトランスのために戦ってきたひとなんですね。
ふたりが過ごしたという洞窟のなかの湖にも行けたりするのですが、ノクターンも本当にシャドウハートを大事に守っていて、ひょっとしたらお互いに恋心も持っていたのかなと感じさせる描写だったりします。
ちなみにノクターンは演じているのもオープンリートランスのAbigail Thornというかたです。スターウォーズシリーズのドラマ『アコライト』にも出演するとのこと!
バルダーズゲート3は同性同士のカップルもいるし、たまに「このひとはシスジェンダーではないかも」と感じさせるひともいるし、そしてそのことを誰も気にしていない(しかしティーフリングが差別や暴力に晒されるなど、平和な世界ではない)のがとてもいいですね。クィアなプレイヤーがいるのだとわかって作っている感じ。