しばらく前に読んだ本。マイクロアグレッションについては日本語でも本や記事が増えていますね。映画でもいろいろ出ているけど、哲学的議論はまだ比較的少数な印象。本書は哲学、倫理学の観点からマイクロアグレッションを論じています。
マイクロアグレッションをどう定義するか、の害とはそもそも何なのかなどの話題もありますが、著者が特に集中して論じているのは、マイクロアグレッションの道徳責任とそれに対する非難の問題。マイクロアグレッションはそのマイクロさゆえに、個別のアグレッサーはそれが引き起こす害に比して大した行為をやっているとはいえず、道徳的責任を負わせるのは過剰になってしまうというのが基本的な問題意識で、そのなかでどうやって責任を問い、どのような非難をおこなうのが社会をよりよくするうえで有用なのかと議論を展開しています。
個人的には主張というより基本的な前提というか、世界観みたいなレベルであまり同意できないところもちらほらあるのですが、非難をいくつかの種類に分け、将来的な行動の修正を求めるタイプの非難というのを持ち出すあたりはとても面白く感じました。マイクロアグレッションについて哲学的に考察をおこないたいひとには、よい足がかりになる本だと思います。応用言語哲学に関心があるひとにも、こんな議論の仕方があるのかと勉強になりそう。