あれこれ日記

趣味の話とか

群像2024年3月号

今月出た群像の「言葉の展望台」は、珍しく日常の体験などの話はあまりせず、哲学の話に振り切ってみています。

テーマは哲学方法論。私は概念分析以外の手法をほぼ知らないので概念分析の話に焦点を絞っていますが、しばしば「どんなことでも哲学になる」と言われる哲学という分野だけれど、やっぱり哲学者がうまく語れなくなる領域はあるのではないか、概念分析が常にまともに適用可能とは限らないのではないか、という話をしています。

トランスジェンダーの人権や経験について語る際に用いられる概念について、その概念を用いるトランスコミュニティにろくに関わったこともなく、大した知識を持っているわけでもない哲学者がいっちょ噛みで適当な放言をして「哲学的議論なんで!」とか言うというよくある出来事に腹を立てつつ考えた内容ですが、私自身も「普遍的な学としての哲学」みたいなイメージに甘えず、語れること、語れない(語ると間違えてしまったり害をもたらしたりする)ことについてちゃんと考えていきたいところです。語れないことを語れるようになるには、みたいな話もしています。

同じ号で、なんと言語学者の川原繁人さんが『言葉の風景、哲学のレンズ』のレビューも書いてくださっています。「おお、こんなふうに読んで紹介してくださるなんて…!」と感動しながら読んだので、そちらもぜひ!

あと今号には一緒にブランダムを訳したりした友人の朱喜哲さんもエッセイを寄稿されてます。酒場のよい客になるとはという話をローティを介して展開していて、朱さんらしい楽しいエッセイでした。