あれこれ日記

趣味の話とか

丸山正樹『逃走の行先』、白川尚史『ファラオの密室』、東野圭吾『あなたが誰かを殺した』

なんだかミステリ気分で、きのうきょうと読んだ三作。

丸山さんは、ほかの作品もそうですが現実の社会問題、とりわけさまざまなマイノリティがこの社会で陥る苦境をしっかり作品に反映しつつミステリにしていくのがすごいですね。今作は『デフヴォイス』シリーズで登場した何森を主人公とするスピンオフですが、それとともにコロナ禍で苦境に立たされる女性たちの物語でもありました。何森が出会う事件を通じて、ベトナム人技能実習生の女性、パパ活をおこなう女性、ホームレス状態の女性、コンゴ籍の女性といった人々がコロナ禍で追い詰められる様子が炙り出され、何森自身も刑事としての自分のあり方を見つめていくことになるという内容。読んでよかったです。

定年間近のシスヘテロ(と思われる)男性の何森が、少しずつフェミニズム的な問題意識に接近していく雰囲気もいい。

『ファラオの密室』は、古代エジプトを舞台に、心臓の一部が足りず死後の審判を受けれないままミイラの体で復活した主人公が自身の死の謎を探りながらファラオのミイラが密室から消失した事件に挑む話。…というとすごく非現実的に聞こえそうですが、意外と奇を衒っている感じはなく、古代エジプトの神話に見られる世界観を実直に舞台設定にしていった印象で、その辺りが面白かったです。ミステリってなぜかジェンダー観が引っかかる作品が多いジャンルなイメージですが、そのあたりも比較的読みやすかったです。

最後のオチは、「当然そうですよねー」でした。

『あなたが誰かを殺した』は、奇抜なトリックなどもなく論理を突き詰める系のミステリでいまでもこんなふうに「あ、気づかなかった!」みたいな驚きを味わえるんだなと感じました。(女性の描写は気になります。)