あれこれ日記

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藤田和日郎『黒博物館 三日月よ、怪物と踊れ』

黒博物館 三日月よ、怪物と踊れ|モーニング公式サイト - 講談社の青年漫画誌

これまでジャンピングジャック、ナイチンゲールを取り上げてきた黒博物館シリーズの三作目。と言っても、私はずっと追いかけていたわけではなく、むしろ本作をきっかけにまとめ読みしたのですが。

本作での主人公は『フランケンシュタイン』の作者メアリー・シェリー。メアリーはある日、高額な報酬と引き換えに、傷だらけの顔で身体中に包帯を巻かれた長身の女性に、舞踏会に出席するに相応しいマナーを教育するように依頼されます。自分の名前も覚えておらず、メアリーから「エルシィ」と名付けられることになるその女性は、ロシアからの女性暗殺者の死体に平凡な村の娘の死体の頭部をくっつけ、さながら『フランケンシュタイン』の怪物のように作られた存在だと言います。ほかの暗殺者から女王が襲撃される可能性を見越して、暗殺者の体を持つその〈怪物〉を女王の参加する舞踏会に出席させ、護衛させるのが目的とのこと。

そんなわけでメアリーとエルシィの共同生活が始まるのですが、これがもうなんというか、ど真ん中フェミニズム!という感じの話なんですね。「女性は男性より脳が劣る」なんて平気で言われていた19世紀の社会を舞台に、女を搾取し虐げる男たちに向かって下働きの女たちやメアリーが、そもそも社会に属せない〈怪物〉であるエルシィとの交流をきっかけに反逆していく。めちゃくちゃ熱いです。

最初は『フランケンシュタイン』を生み出した自分のなかにも〈怪物〉が眠っているのではと恐れていたメアリーが、〈怪物〉とはこの男性中心的社会に抗う者の名前であると考え自ら〈怪物〉を名乗り始めるところとか、たまらないですね! 世界初のプログラマーとも言われる女性エイダ・ラブレスも登場して活躍します。

私としては、やっぱり背が高く、外見も普通でないとされ、社会に居場所がなかなか得られず、というエルシィにかなりシンパシーを持ってしまいます。こんなに強くも優しくもまっすぐでもありませんが。それでも、私自身〈怪物〉的に言われることが多い身なので、「怪物」という言葉をむしろエンパワーの言葉に変えていくストーリーには泣きそうなくらい感動しました。

それに、とにかくエルシィが可愛いんですよね。仕草も表情もいちいち可愛い。おすすめの漫画です。

藤田和日郎さんって、有名な作品がたくさんあるのにこれまで読んだことがなくて、過去作も読んでみようかな。