あれこれ日記

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山口智美・斎藤正美『宗教右派とフェミニズム』(青弓社)

宗教右派とフェミニズム | 青弓社

右派議員と生長の家日本会議統一教会といった宗教団体との連携を押さえながら、2000年代の「ジェンダーフリー」バッシングに至るまでの歴史的な流れを確認したうえで、それが「親学」、「女性活躍」、自民党改憲案、「歴史戦」などといったさまざまな局面にどのように繋がっていくのかを辿る本。

津田さんの解説にもありますが、ひとつひとつの点としては知っている事柄が、ジェンダーというトピックを通して線で繋がっていて、逆に言うとジェンダーというトピックをメディアが取り上げてこなかったからこれまで「点」にしか見えていなかったとわかって、いろいろなことが腑に落ちる思いでした。

そして、バックラッシュを進めてきた右派はさまざまに連携をとっているのに、フェミニズム運動の多くはそれぞれシングルイシューで戦っているという問題もある。日本軍「慰安婦」問題や在日コリアン差別、LGBTQ+への差別などに十分向き合ってこなかったマジョリティのフェミニズムの問題が、インターセクショナリティ(交差性)の軽視や否定として表れている。さまざまな課題が山積みの現在、日本のフェミニズムは自らが抱えている状態にさえ向き合うことができず、危機的な状態にあるのではないか。(208頁)

この指摘をちゃんと考えていきたいです。

私個人の関心としてはやっぱりLGBTQ+への攻撃のあたりが気になっていたのですが、読んでいて、2000年代の「ジェンダーフリー」バッシングを主導したのとまったく同じ面々がいまLGBTQ+の攻撃を主導していること、「そんなものを認めたら男女の区別が失われ、男女同室着替えetcを認めることになる」みたいな主張もほとんどまったく変わっていないことに、衝撃を受けました。いや、話では聞いていたけど、想像以上だったので…。私たちを攻撃するならせめて使い回しでなく、私たちとちゃんと向き合って私たち用の攻撃をしてほしい。いや、してほしくはないですが。

それでも、2018年のお茶の水女子大の発表以降、いわゆる右派に属しているとは目されない論者が次々とトランスへの攻撃をかすがいにして右派の運動に巻き込まれていく様子はやっぱり異様だったようで、明らかにその辺りの頁ではほかの箇所では出てこない人名がたくさん出てきて、読んでいて改めて「大きな波がここで起きている」という印象を受けました。

自分たちがいまどういう経緯のもとで焦点になっているのかを理解する助けになるとともに、同じ運動が多方面に広がっていくなかでほかにどういった人々がターゲットに含まれていて、それゆえに連携していくべきなのかを認識する手掛かりにもなったように思います。