あれこれ日記

趣味の話とか

愛染マナ『俺の美女化が止まらない!?』(宙出版)

俺の美女化が止まらない!? - 宙(おおぞら)出版

たまたま見かけて読んでみました。いま出ているのは2巻までです。異性装の話はもちろん感覚がよくわからないところも少なくないのだけど、でもやっぱり一部の経験が重なるところもあるので、とりあえず読んでみようと思ってしまいますね。

大学入学を機に家賃が激安の下宿で暮らし始めた男の子が主人公。安い家賃と引き換えに同じ建物にあるお店にバイトで入るという条件になっていたのですが、なんとそれが女装カフェだった、というのでお店の仲間たちに助けられながら女装の世界に触れていく、という話です。みんな綺麗です。

煌びやかな服やメイクで自撮りとかをわくわくと楽しんで、みたいなのは私にはほとんどない感覚なので、「ほお、そんなものなのか」という調子で眺めるだけになりますが、「女性客だけにうずらたまごをサービスするラーメン屋でパス度チェック」とかは、「CoCo壱じゃん!」とちょっとテンション上がりますね。

やっぱり、パスをめぐる視線のポリティクスのなかで周囲とやり取りしつつ自分のあり方を安定化させていくみたいなのは、トランスと共通する要素だから、読んでいて楽しくなりますね。私はそこまでパスに真面目でなかったから、メイクの研究とか仕草の研究とか、ほぼしてないようなものですが…。この漫画の登場人物たちは(外出するときには)とても真面目にパスを目指してます。

なんにせよ私は異性装のひとたちを見るのも好きなので、とりあえず綺麗で可愛い女装男子たちを眺めるだけでも楽しかったです。絵柄も美麗。

『不可解なぼくのすべてを』などは、同じような舞台でありながら、フェミニンなXジェンダーの子もいれば、シスゲイやシスヘテロの女装の子もいれば、トランスのお姉さんもいれば、潜在的にトランス的なのだけど、うまくアイデンティティの処理ができないまま「男の娘」というカテゴリーに救いを感じているという子もいたりして、「男の娘」というコンセプトのもとで実際には多種多様なアイデンティティの人々が集まっているというふうになっていたけど、こちらはそういう展開にはならないのかな。ならないといけないわけではないけど、いろんなひとがいるなと感じられたら、さらに私は楽しくなりそうです。

ところでトランスコミュニティでは「生活が安定してきたら逆にフェミニン/マスキュリンな装いへのモチベーションがなくなってきた」「むしろシスジェンダーのひとたちの多くがあんなにステレオタイプ的なフェミニン/マスキュリンな装いを当たり前のようにいつもしてるのがわからん」みたいな話が(移行歴が長いひとたちになると)出てくるものですが、私もなんだかもはやだんだんとそんな感じになってきてるんですよね。そろそろ人生の1/3くらいが移行後の生活になりつつあって、もはや移行前の自分の姿とか記憶さえ薄れてきているし…。

むかしは「パスするためには華奢にならないといけないのかな」「いや、逆に脂肪をつけたほうが…?」とか、「骨格を誤魔化す服装とか工夫したほうがいいのかな」とか思い悩んでいたこともあるけれど、最近は「もっと筋肉と体力をつけて逞しくなりたい」「斬新な哲学的アイデアを奪いに日本哲学会にスーパーヴィランが現れたら立ち向かえるくらいになりたい」「メイクとかは面倒だからほどほどで服もTシャツとかでいい」みたいなことを言ったりしたりしています。でも、こういう漫画で読んでいると、着飾ったり派手なメイクをしたりも、やってみると楽しそうですね。