あれこれ日記

趣味の話とか

孤伏澤つたゐ『ゆけ、この広い広い大通りを』(日々詩編集室)

ゆけ、この広い広い大通りを | HIBIUTA ONLINE SHOP

これもぜひ読んでほしい作品です! それぞれ経験も辿ってきた道も異なる三人の女性の人生が交差する瞬間の話です。

主人公のまりは、幼いころから過ごした地元にずっと暮らしていて、夫と二人の子どもがいる主婦。スーパーでの買い物中でのトラブルをきっかけに、かつての同級生である夢留に助けられ、友人として交流するようになっています。

夢留はトランスジェンダーで、まりと同級生だったころは男子生徒として扱われ、過ごしていました。大人になったいまはギターを弾き、歌を歌い、大好きなバイクをよく走らせる素敵な女性だけれど、過去の自分を知っているひとの多いこの町では、同級生と会いそうな場所には行きにくいといった居心地の悪さも。

まりの親友の清香は、世界をよくしたくて東京に行き、フェミニズムを学び、必死で自分の考えを発信しながら働いてきました。けれど、メンタルヘルスに不調をきたして、母親との関係を中心にさまざまな窮屈さはありながらも、地元に帰ってきています。

この三人は、同じ「女性」でも、たぶんすごく違う経験をしていて、すごく違う人生を送っている。互いに完璧に理解し合えているわけでも、完全に「このひとになら傷つけられることはない」と信頼し切れているわけでもない。でも、三人でいま穏やかにお花見をしている。それがとてもいい。

現実でも、そんな完璧に通じ合う関係なんてほとんどの場合ないですよね。シスジェンダーの女友達といても、例えば私にはやっぱり出産や育児に関する経験についてはわからないことが多いし、生理の大変さとかも実体験としては知らない。向こうも向こうで、性別違和とともに生きる子ども時代がどんなものか、性別移行で何を経験し、ミスジェンダリングで何を感じるかとかは必ずしもわかっていなかったりすると思うのですが、それでもそばにいられる、そばにいたい。友達ってそういうものだと私は感じます。

うまく表現できているかわからないのですが、同じでなくてもいい、それぞれかなり違う女性たちがここでいまともにいる、その「違う」というありかたに、希望を感じるし、癒しを得られるように思いました。

あと、トランスジェンダーの女性の趣味がバイクというのもいいですね。かっこいい。