あれこれ日記

趣味の話やトランス話、哲学のこと

『わたしは最悪。』

映画『わたしは最悪。』公式サイト

公開当時、いろいろと余裕がなくて見に行けていなかったのですが、ようやく配信で見ました。面白かったです!

主人公は、もうすぐ30になろうとしている女性ユリヤ。ユリヤはかつて成績優秀で医学部に進学したものの、何かしっくり来ず心理学を志望して大学に入り直し、それもしっくり来ずカメラマンを目指してみて、そちらもなんとなく漠然としたままコミック作家のアクセルという男性と一緒に暮らしている。むかしの人々のように「結婚して子どもを産み育てる人生」に合わせられる気はせず、子どもを欲しがるアクセルとはだんだんとすれ違っていくけれど、では何がしたいのか、どうしたいのかと問われるとそれもよくわからない。

成績優秀なひとのライフコースも古典的な「女性のライフコース」もしっくりと来ないユリヤが、不合理なことやひとを傷つけることもたくさんして、迷ったり悶えたりしながら、少しずつ自分の生き方の焦点を合わせていくような映画でした。

少しだけ『フランシス・ハ』に似ているようなところもありますが、あちらはどちらかというと一度立ち止まって自分の生きる道を探してもがいてみよう、みたいな雰囲気があったのに対し、『わたしは最悪。』はなんというか終始余裕がなくて、そのあたりがリアルに感じられます。

自分にとってしっくりくる道はわからないけど、それでもパートナーは子どもを持ちたいと語りかけてくるし、ひとたび妊娠してしまえば子どもをどうするか決めないとならない。ユリヤの話ではないけれど、病気だって思いがけずなってしまえばゆっくり考える暇もなく時間を削り取っていく。時間はない、でもどうしたらいいのかわからない、ときに欲望のままに少しの時間を過ごしてみたり、ドラッグに身を任せたりしてみても、そこから醒めれば相変わらず焦らされる。

そんなユリヤだからこそ、その失敗や迷いも含めて共感してしまうし、そして最後の姿に爽やかさを感じてしまうのかな、と思ったりしました。