あれこれ日記

趣味の話とか

世界を救うのは虹色レーザー(Magical Boy)

The KaoのMagical Boyの話をしたいです! 読んだのはだいぶん前ですが、本当に好きで、そして私の交友関係内でこれを読んでいるというひとを文字通りひとりも知らなくて寂しいので。もとがウェブコミックなので、以下から部分的に無料で読むこともできます。

Read Magical Boy | Tapas Web Comics

主人公マックスは、親友ジェンを除くとまだカムアウトできていなくて、移行も始められていないトランスの男の子。可愛らしいガーリーな格好をさせようとする母にうんざりしつつ、なかなか思うような姿で暮らせずにいます。そんななか、ジェンが誕生日プレゼントにナベシャツ(胸を押しつぶしてマスキュリンな見た目にする服)的なものをくれて、学校のトイレで嬉々として身につけるのですが、その最中に地震が起こり、そのときから、マックスには虫のようなかたちをした何かが見えるようになります。

そして帰宅。両親が用意してくれた誕生会の場でカムアウトしようと「外見も、体も、何も僕の心の奥底にいて、どうにか外に出ようとしている人間と調和していないんだ」と打ち明けるマックスに、母は目を輝かせ「わかってるよ! ごめんね、全部ひとりで抱え込むってわかっていたなら!」とマックスを抱きしめます。困惑するマックスに母は「うちは代々続く魔法少女の家系で、あなたの奥底には光の女神オーロラの力が眠っているの」と告げます。そう、マックスは魔法少女の家系に生まれたトランス少年だったのです。

このときからマックスの葛藤が始まります。魔法少女ものお馴染みの小動物まで登場し、母も小動物もマックスに魔法少女としての訓練をさせたがるのですが、魔法少女としての力を発揮するには「女の子らしい振る舞い」をする必要があるとふたりは言ってきます。でも、それはしたくない。けれど変身して戦わないと街が破壊され、友人や家族が傷つけられてしまう。マックスは嫌々魔法少女業務をしつつ、どうにか別のやり方がないのかと模索し続けていくことになります。そしてやがて、最高にクールでかっこいい魔法少年へと覚醒していくのです!

このコミック、マックスの苦闘もいいのですが、出てくるキャラも素敵なんですよね。マックスを常にサポートしてくれるジェン(レズビアンです)、信心深い家で育ったために自らのセクシュアリティを抑圧し、クィアな人々への攻撃性を持ってしまった女の子、いかつくて不良っぽい外見ながら可愛いものが大好きでマックスの変身後衣装に興味津々な男の子、そしてマックスが恋するなんだかすごく普通で普通にいい子な男の子。みんなとても可愛い。

そして、マックスの力を解放するには、赤の力、緑の力など異なる六つの色の力を手にしていかないとならないのですが、もうここまで来たらわかりますよね? もちろん、最終形態は赤、橙、黄、緑、青、紫の色が揃った姿で、最強技はレインボーレーザー! レインボーレーザーで街を、世界を救うトランスボーイ魔法少年! ばかばかしくても子供っぽくてもなんでもいい、こういうのが見てみたかったんだ! という感じです。

というか、こんなのでも出してくれないと、私たちには適切な「子ども向けコンテンツ」だってなかったんですよ。そんなものないなかでいままでやってきたわけです。なので、もう37歳だけれど、いまからでも思う存分に子どもをやることからきちんとやらせてほしい。そんな望みを思いっきり叶えてくれる漫画です。いつかみんなでレインボーレーザーで世界を救いたいですね!