あれこれ日記

趣味の話とか

拳とロックのガールズパワーストーリー(Heavy Vinyl/Heavy Vinyl: Y2K-O!)

Boom! BoxのコミックHeavy Vinylとその続編Heavy Vinyl: Y2K-Oを読みました。

HEAVY VINYL – BOOM! Studios

 

ひとことで言うと、ガールズクィアロックアクションコミック! 楽しく可愛く爽快で、最高でした。

1999年が舞台。主人公は16歳の活発な雰囲気の女の子クリス。クリスはVinyl Destinationというレコードショップでバイトをしています。Vinyl Destructionには、ゴスファッションでクリスに何かと突っかかってくるドロレス、歩く音楽辞典ケネディ、そしてひと懐っこいが実は強い闘志を秘めたマギーというクリスと同世代の女の子たちが働いていて、さらにクールな店長のアイリーンもいます。クリスはマギーに恋をしていて、楽しくバイトをしつつ、帰宅するとギターを片手に、「最高の演奏でお店のひとたちに褒め称えられ、マギーに愛を打ち明けられふ」なんて夢を見たりしています。

ところが、Vinyl Destinationには、クリスの知らない裏の顔がありました。なんとこのお店の本当の姿は「ファイトクラブ」で、店長アイリーンのリーダーシップのもとで、みんなで犯罪と戦ったり、ガールズバンドの妨害をする男性たちをとっちめたりしていたのです。クリスもこのファイトクラブの一員になり、ボクシングを学びながら失踪したロックスターの捜索に加わることになります。

そしてその事件の背後には凶悪な音楽プロデューサーの影がちらつき、やがてVinyl Destinationの面々は拳だけでなく音楽でも戦っていくことになります。

 

という、なんだかハイテンションな話ですが、ポップで可愛い絵柄や、台詞の軽妙さもそれによく合っていて、読んでいてとにかく楽しいコミックです。

このコミック、とにかくクィアキャラだらけで、それだけでも楽しいんですよね。マギーに恋するクリスだけでなく、店長アイリーンは女性のパートナーと暮らしているし、続編Y2K-Oではパンキッシュでこっこいいトランスフェミニンなキャラも登場したりします。トランスフェミニンキャラでかっこいい系のひと、いいですよね。実際の90年代ってそんなのではなかったのではないかと思うけど、やたらとあちこちでプライドフラッグやトランスフラッグがかかっているのもいい。

そして主人公クリスのナレーションが可愛いんですよね。大好きなバンド「ステゴザウルス」がお店に来るという日には「Finally, it was almost time...for Stegosur! a.k.a. the best moment of my life.」(「いよいよ近づいてきた…ステゴザウルスの来る時間! a.k.a.我が人生最良の瞬間!」みたいな感じ?)というナレーションがついていて、ここで「a.k.a.」とか言うのがなんだかもう愛おしい。

ファイトクラブの理念が、アイリーン曰く「セクシズム、ホモフォビアゼノフォビア、トランスフォビア…、あらゆるかたちの不正義と戦う」なのもいいし、ファイトクラブに加わる勇気が出ずにいるクリスをマギーが誘うときの言葉が「とにかく、たぶん私が言いたいのは…家父長制と戦うのは最高だから、ちょっと試してみたらってこと」なのもたまらないですね。

ぜひいろんなひとに、クリスの恋の行方、陰謀との戦いの顛末、そして彼女らのバンドの活躍を見てほしいです。道を切り開くのは音楽と拳とシスターフッド