あれこれ日記

趣味の話や哲学のこと

Carrie Jenkins (2017) What Love Is and What It Could Be, Basic Books

恋愛の哲学について調べる機会があり、だいぶん前に買ったまま放置していたのを思い出して読んだ本。

著者のキャリー・ジェンキンズはポリアモリーのひとで、本書の執筆時点において互いの合意のうえで夫とボーイフレンドとの交際をしています。そしてそんな著者だからこそ、恋愛をめぐる科学、哲学、日常の語りに、違和感を抱いています。恋愛が生理学的な現象なら自分にもそれが起きているとしか思えない、しかし自分たちの関係はこの社会において「本当の愛」とは見なされない。こうした観点から、本書は形而上学的手法によって恋愛の正体を探っていきます。

本書で提示されるのは恋愛の二重性質説。こうしたテーマの書籍で恋愛の社会構築性が論じられるというのは容易に想像がつくと思うのですが、ジェンキンズさんは恋愛をもっぱら社会構築物としてのみ捉えるのも、もっぱら生物学的現象としてのみ捉えるのも誤りであり、恋愛には社会的面と生物学的面の双方がともにあるのだ、と論じていきます。

分析哲学方面の人間としては、「自然科学は大事だよ」という感覚もすごくわかります。基本的には自然科学の知見を可能な限り尊重したい。でもジェンキンズさんにはそれに加えて、どうも社会的な面があるから「真の恋愛」と「偽物」の区別と後者の抑圧が生じる一方、生物学的な面があるからこそそこを取っ掛かりに社会における恋愛のあり方を変えていける、という考えがあるようです。この辺り、興味深かったです。

分析哲学の手法で恋愛について論じるときの参照点のひとつになりそうですね。