あれこれ日記

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【ネタバレあり】Clair Obscur: Expedition 33

今年おおいに話題になって、先日のゴールデン・ジョイスティック・アワードでも大賞に当たるUltimate Game of the Yearを筆頭にたくさんの賞を獲っていたゲームです。『ファイナルファンタジー』などに代表される日本特有のRPGJRPGというのですが、本作はフランスのクリエーターが作ったJRPGという触れ込みです。

ちなみに本作に出演してゴールデン・ジョイスティック・アワード主演賞を受賞したジェニファー・イングリッシュさんはオープンリーレズビアンの方らしいです。作中にクィア要素はほぼありませんが、クィアな俳優さんが注目されるのは嬉しいですね。受賞のスピーチでも自身の演じたマエルというキャラと重ね合わせる形で、クィアジョイを語ったりしています。

JRPGと評価されているだけあって、やってみると確かに私が若いころにやったFF8とかを思い出させる雰囲気がありました。けれど斬新な戦闘システムや独創的なヴィジュアルなどこれまでにない要素もしっかりとあって、「まったく新しい古典的JRPG」みたいな感覚。最初はいかにもフランスっぽい服装のひとたちばかりなのに、主人公が隊服になるとともにいきなりFF的なファッションになったのは、ちょっと笑いました。

本作は世界観がかなり独特で、世界は大崩壊によってほぼ滅びてしまい、人類はルミエールという小さな街でのみ暮らしているという設定です。そして毎年決まった時期に「ペイントレス」という名の謎の女性が「モノリス」という石柱に数字を書き込んでいて、その数字は年々カウントダウンしていくのですが、毎年その書き込みとともにその数字以上の年齢の人々が一斉に消滅してしまいます。人々はこの「抹消」という現象により予告されている近い将来の確実な死を意識しながら生きる一方で、どうにかモノリスへ到達してペイントレスを討伐し、抹消という現象自体を食い止められないかと遠征隊を派遣してもいます。

物語の出発点はモノリスの数字が33になる日。主人公ギュスターヴはかつての恋人の抹消を見送ったあと、自身の開発した「ルミナコンバーター」という技術を携え、妹のような弟子のような存在のマエル、同い年の仲間のルネやシエルといった人々とともに、遠征の旅に向かいます。

設定も変わっていますが、全体に絵画にまつわる用語がたくさん使われて世界が構築されている点も面白いですね。タイトルのClair Obscurも

「遠近法」という意味だし、ルミエールという街の名前は「光」だし、ペイントレスはpaintress、つまり女性画家のことです。本作では「ピクトス(pictos)」と呼ばれるものを装備して戦うのですが、造語だと思うけどこれもpictureとかpictogramとかを想起させますよね。話が進むにつれて会話のなかでも「何かを描く」などの言葉が多くなっていきます。

さて、本作で何より話題になったのはその戦闘システムかと思います。基本はオーソドックスなターン制で、素早さ順に行動を選んでいくかたちなのですが、本作では敵の攻撃のほぼすべてがボタン操作によって回避やパリィをできるようになっています。なので、ターン制なのですがドラクエみたいにのんびり楽しむ感じではなく、常に相手の動きを注意深く見て、タイミングよく回避やパリィのボタンを押していくプレイになります。バランスもよくて、回避は判定がやや甘い代わりに避けるだけになる一方、パリィは判定がシビアな代わりに敵の攻撃をすべてパリィしきると反撃をすることができます。回避やパリィが成功するとダメージは一切ないので、理屈上はどんなに低いレベルでどんなに強い敵に挑んでも、すべてパリィし切れば勝てるようになっているはず(回復する敵とかは育てないと無理かもですが)。

回復ポイント兼セーブポイントの旗で休憩すると敵が復活したり、先頭ではシビアなパリィを要求されたり、終盤になるとあっという間にこっちを壊滅させるような攻撃をする敵が出てきたり、ターン制RPGなのにプレイ感覚はどこかソウルライクなところがありました。強敵には何度か負けるのが前提みたいで、やり直しもすぐにできて、いわゆる「死に覚えゲー」的な面白さですね。最初のロケーションで「あいつは危険だから避けよう」とか言われている敵を何度も敗北しながら低レベルのまま倒したりしていました。

強化システムも独特です。ピクトスにはそれぞれ防御力や体力を上昇させる効果があり、装備中はその効果がキャラクターにつくのですが、それに加えて各ピクトスには特殊効果もあります。ダメージを増やしたり、自動回復だったり。なかには戦闘開始とともに装備者が自滅するというのもあったりします。で、ピクトスを装備したまま戦闘をこなしていると、この特殊効果のみが「ルミナ」として抽出されて、ピクトスとは別枠で各キャラが身につけられるようになるんですね。そのため、装備品として強いピクトスを使うだけでなく、みんなで共有したい効果があるピクトスは弱くても優先的に使うだとか、ピクトスの枠で手に入れる特殊効果とルミナで賄う特殊効果のバランスを考えるだとか、いろいろと工夫の余地があります。自滅する特殊効果+死亡時にほかのキャラにバフを与える特殊効果+自動復活とかを重ねてつけて、戦闘ごとに一斉パワーアップさせるコンボとかもできます。最初はよくわからなかったけど、慣れてくると組み合わせを考えるのが面白くなります。

【ここからストーリーのネタバレ】

ストーリーもとてもよかった。最初は『進撃の巨人』の冒頭みたいな、圧倒的な脅威に悲壮な覚悟とともに立ち向かう者たちという様子なのですが、人間以外の存在と出会ったり、少しずつ世界の謎が解明されたりしていくにつれて、いったい何をする旅なのか、登場人物たちは何者なのか、だんだんと様相が変わっていくのが面白かったです。

ACT1の終盤でそこまでの主人公だったギュスターヴが死亡し、代わりにいきなりやってきたヴェルソというキャラがなんだかよくわからないうちに主人公面をしだすのが最初は辛くて、「なんでギュスターヴじゃなくてあなたがみんなと仲良くなっているのか」と葛藤を感じたりもしましたが、最後までやると確かにこれはマエルとヴェルソの物語なのだなと納得します。

最終盤でふたりの決闘になるあたりでは、どちらの心情にも肩入れしてしまって、the Last of Us 2で最終戦にどうしても挑みたくなかったとき以来の、「戦う展開なのに戦いたくない」という経験をしました。どっちも選べないよ……。結局はずっとマエルを気に入って使ってたからマエルを選んだけれど、その道がマエルの幸福にならなそうなのもひしひしと感じてしまう。

ところでこのゲーム、ラスボス戦はいちど終わらせるとニューゲームをしない限りやり直せないみたいで、エンディングも片方を見たらもう一周しないと見れない仕様みたいです。なんと硬派な。マエルエンディングの悲しさがすごかったけどもう一周する今期はなくて、ヴェルソエンディングは概要を調べたのですが、たぶん物語的に王道というか、おさまりがいいのはヴェルソのほうですね。それはそれで悲しいけど、少なくともマエルが前に歩き出す悲しみではありそう。マエルエンディングはバッドエンド感が高いです。

ところでラストダンジョンの直前に行ける場所が大量に増えて、ストーリー攻略に必須でないボスなどもたくさん出てくるのですが、そこで私はめちゃくちゃ時間がかかりました。あとはラストダンジョンだけなのに道草で延々と時間をかけることになるのも、むかしのJRPGっぽいですよね。FF7とか、アルテマウェポンと戦ったりミニゲームしたりしているうちに、子どもだった私は冒険の目的とかすっかり忘れたりしていました。その感じ。道草ボスのほうがラスボスよりはるかに強いのもなんだか懐かしい。クリア後ボスが強いとかはいまでもあるけど。

ほとんどのボスを倒したと思うのですが、ひとりだけ、シモンというボスをどうしても倒せなくて断念してしまいました。私の反射神経では第二形態のパリィがどうしても無理で……。ふだんあまりゲームでこんなふうに断念することがないので、悔しいです。でもスピードが速くて何度も行動し、こちらのシールドは吸収し、HPを1にする効果を繰り返し発動し、攻撃力は高いうえにいちどの攻撃回数が多く、こちらの死亡キャラを場から削除して復活不能にし、……なんて敵の攻略法は私には思いつかなかった……。それ以外の敵はマエルがめちゃくちゃ強くてだいたい葬り去ってくれました。「マエルがやたらと強い」というのも、ラストまでプレイすると心苦しくなるのですが。

本作には可愛いキャラクターもたくさん登場します。なかでも私のいちおしはエスキエというキャラ。妖精的な存在なのですが、まんまるなお腹をした巨大なキャラで、のんびりとしたしゃべりかた、とぼけた顔、しかもなんだかよくハグをしてくれる。JRPGでは話が進むにつれて船が手に入り、飛行船が手に入り、場合によっては潜水艦が手に入り、みたいなことがよくありますが、本作ではぜんぶこのエスキエがこなします。ざばざば泳いだり、手をぱたぱたさせて空を飛んだりします。本当に可愛い。家にひとりほしい。

全体的に非常に満足度の高いゲームでした。気になったのは、フィールド上でファストトラベルがなくていちいち実際に移動しないといけない点と、ミニゲームの操作性が悪い点でしょうか。ビーチバレーのミニゲームは操作がしづらい、狙いがつけづらい、球が見えづらいという三重苦で、非常に難しかったです。

各ロケーション内でのマップがないのも方向音痴の私には少し大変でした。それはキャラクターとともに迷う感覚を味わってもらおうと意図的にデザインしたことみたいなのですが、本当に迷いに迷いました。プレイしているひとのアドバイスなどを見ると「正しいルートは明かりがついてわかりゆすくなってるから、それを意識したら迷わないよ」みたいな情報があるのですが、違うんですよ。RPGのダンジョンって、正しい道に行きたいのではなく、すべての道をきちんと網羅したうえで最後に正しい道に行きたいんです。だから私の言う「迷う」は「正しい道がわからない」ではなく、「意図的に正しくなさそうな道に行ったあともとの場所に戻るとか、そこが本当に正しくない道かどうかを望ましいタイミングで判断するとか、行った道と行っていない道をきちんと識別したうえで行っていない道を見逃さず見つけるとかが難しい」という意味なんです。それが本作ではとても難しかった。ラストダンジョン直前になって、ひととおり全部回り直したのですが、探索残しが山ほどありました。

ともあれ、話題になっていただけあって面白いゲームでした。

【追記】

マエル役のジェニファー・イングリッシュさんって、BG3のシャドウハートさん役のかたなんですね! ぜんぜん気づいていませんでした。あちらはあちらでthey/themをしっかり反映した台詞にしようというので、少し前に声の収録をし直したらしいですね。