あれこれ日記

趣味の話や哲学のこと

ヤマシタトモコ『ほんとうのことは誰にも言いたくない』&『さんかく窓の外側は夜』

ヤマシタトモコさんのインタビュー本『ほんとうのことは誰にも言いたくない』を読みました。20時間! 詳細に各作品のことを掘り下げて話を聞いていて、しかも淡々としたインタビューでなく、インタビュアーの山本さんが本当に楽しんでヤマシタさんと話しているのがわかって、読んでいる方も楽しくなります。

ご本人もそんなことをおっしゃったりしているけど、ずっと読んでいると繰り返し出てくるトピックがけっこうあって、それが面白いですね。まだ読んでいない作品がいっぱいあるので、読みたくなりました。

印象的だったのが、『違国日記』で初めて創作ノートをまとめ始めたという話。実は私もノートの類をぜんぜん作らないタイプで(小学校のころからノートをまとめるのも見返すのも苦手……)、これまでは論文も本もエッセイも、用意するのはせいぜい簡単なメモくらいで、目次や節立てを最初につくったあとは基本的に記憶を頼りに頭のなかで流れを組み立てて書いていくスタイルだったのですが、最近それがぼちぼちあまりよろしくなくなっているのではと感じています。私ももう40前で、忙しさなどもあって、以前ほどには頭のなかで考えたり記憶を引っ張り出したりだけであれこれ済ませられなくなっている気もするし。私にもそろそろ文明化が必要かも……。

これはこの本の話というより、『違国日記』の話ですが、ジュノさんが槙生さんに電話してペニスの話をするシーン、好きなんですよね。特にそれが話題になっているわけではないけど、ふと思い出しました。体の話をして、それをシスジェンダー目線で解釈されなくて(トランス的身体の持ち主は自分の体を嫌っているに違いないとか、そうでないなら本当の性別は○○なんだとか決めつけられず)、そんなふうに話せる相手って大事ですよね。

で、その流れで「そういえば読みそびれていたな」と『さんかく窓の外側は夜』をまとめ買いして読んでみました。

世間のことわりから外れた力を持つ人々がだんだん集まっていくあたりで、そのひとたちが自分の力について周りに打ち明けられなかったこと、周りのひとたちと気持ちを共有できないこと、同じ力を持つもの同士の惹かれかたなど、「これ、クィアなつながりの話では?」と感じて、とても面白かったです。最終的に「血の繋がり」ではなく自分の選んだパートナーへと向かうあたりもいいですね。