あれこれ日記

趣味の話や哲学のこと

Thirsty Suitors

Outerloop Games

Xboxゲームパスでプレイ。わりといろんなプラットフォームで遊べるようです。

クィアゲームのおすすめみたいな記事を見るとあちこちで2023年の優れたクィアゲームとして名前を挙げられていた本作。実際にプレイしてみるとなかなか風変わりで楽しいゲームでした。

主人公のジャラは20代のインド系アメリカ人女性。本作はジャラが久しぶりに故郷に帰るところから始まります。経緯はだんだんと語られるのですが、しばらく交際していた女性と別れたのがきっかけの模様。

ところが、故郷には若いころのジャラが交際し、そして深く傷つけてしまった6人の元恋人たち、連絡を絶っている姉、衝突の多い母が待っていて、しかもかつてジャラがスケボーのレジェンドとして君臨した場所には怪しげなクマの着ぐるみの人間が若者たちを口巧みに集めて崇拝を得ているという。

ジャラは姉を探し、両親と料理を介して対話し、元恋人たちと気持ちをぶつけ合い、クマのもとに集う若者たちと対決していくことになります。

ゲームジャンルは、何と言ったらいいのか、複合的です。自宅での料理は実質的にリズムゲームのようになっています。街の移動はスケボーでおこなわれ、少しクセがあり、またスケボーのミニゲームも多数用意されています。時間内にスコアを集めるとか、複雑なギミックがあるコースを走り切るとか。そして元恋人たちやスケートパンクたち、街中をうろつく求婚者たちとは、コマンド式のターンバトルで戦います。

このターンバトルが変わっていて、通常攻撃で毎回WPというスキル使用時に消費するポイントが回復する仕様。なので、スキルをふんだんに使っては、通常攻撃でWPを回復するというのが(アイテムをケチる場合)基本的な戦術になります。スキルも独特なシステムで、まずダメージは与えずに相手の感情を煽るスキルがあります。こちらを崇拝させたり、怒らせたり、泣かせたり。これは敵ごとにどの感情を煽れるか(要するに弱点属性)が決まっています。煽る際のジャラのセリフも面白い。うまく感情を煽れたら、その感情にクリティカルヒットするスキルで大ダメージを与えられます。

ゲームシステム上は「戦闘」に当たるのですが、この感情の煽り合いが実質的に本音のぶつけ合いになり、元恋人との衝突が終わると互いに蟠りを乗り越えて再び友人として新たな関係を築き始めるというのも面白いところ。なので、罪悪感を持ったりせず思う存分に煽りましょう。

このゲーム、おすすめクィアゲームとしてよく言及されるだけあって、性的マイノリティの存在がかなり当たり前に描かれています。主人公のジャラは自分でどんなふうにセクシュアリティを捉えているかははっきりはわからないけれど(あるいは描写があったのに忘れているだけかも)、これまでの恋人にはノンバイナリーも女性も男性もいて、トランスジェンダーもシスジェンダーもいて、はっきりと自分をクィアとして語ります。

元恋人もさまざま。元恋人のひとりディヤはレズビアンで、親にカムアウトして家から追い出されたという人物。ジャラの幼馴染で何度も付き合っては別れてを繰り返し、作中でも明らかにほかの元恋人とは扱いの違うタイラーは、トランスジェンダーの女性で、トランジション前からずっと一緒にいて、トランジションの過程をジャラもジャラの両親も見守ってきた、というキャラクター。ほかにも、南アフリカ出身でノンバイナリーのアンディルというキャラも。アンディルは、メディアにおけるノンバイナリーが「小柄なひと」というのをステレオタイプとしていることへのもやもやを語ったりしていて(アンディル自身は大柄で筋肉質)、そのあたりも面白いです。

なので、元恋人たちとの戦いは傷つけてしまった過去との対峙でありながら、ときに同時にジャラが自分自身のアイデンティティや自分の置かれている境遇と向き合うきっかけにもなります。ディヤとの口論のなかでカムアウトしても親に捨てられたりはまるでなかった自分を改めて意識したり。また、バトルでもその他のイベントでも、ジャラはインド系であり、けれどスケートボードに代表されるようなアメリカらしい文化の担い手でもある自分自身のアイデンティティにも向き合うことになります。

そんなゲームなのですが、それよりも何よりもプレイしていて印象に残るのは異様なテンションの高さ。料理のために手を洗うだけで錐揉み回転するし、帰宅するとぐるぐる回転しながらジャケットを脱ぐという、とにかく不必要にアクションが大きくて、そこがクセになります。これはとりあえず実際に見てみてほしい。

ストーリーを進める分には全体的に難易度は高くなく、魅力的なキャラクターや謎のテンションを楽しんで元気になれるゲームです。自動車整備士で筋トレばかりしているレズビアンの叔母さんとかもいます。

ただ、ミニゲームの難易度は高かったです。スケボーチャレンジは、特典集め系は時間がめちゃくちゃシビアで、最短ルートを通ったつもりでもSランクになかなか行けなかったりするし、ギミックコースは頭がこんがらがります。感覚的にはいわゆる「死にゲー」に近く(死にはしないけど)、何度も何度も失敗しては少しずつ指にアクションのタイミングを覚え込ませ、画面の変化に応じて反射的に操作できるようにしていくという、コツも何もない攻略が必要に思いました。高難易度コースのThirsty RoadやThirstiest Roadはかなりきつかったです。

それに比べると料理のほうは比較的楽なのですが、ただこれも少しクセがあります。というのも、単に普通にプレイするだけだとパーフェクトをとっても最高評価に達しないんですよね。各工程ごとに短めのリズムゲー的なものが展開して、料理を作り終えるまでそれを繰り返すのですが、工程の合間に特殊コマンドを利用することができるようになっていて、これをうまく使わないといけない。リズムゲーの難易度を上げる代わりに評価も上げるコマンドや、料理の評価をする母親や父親をおだててランダムで効果を得るコマンド、さらには先祖たちを乗り移らせて評価を増やすコマンドなどがあります。

基本的には、コマンドを使う用のポイント「ヒート」をためて先祖を呼ぶか、難易度を上げる超絶テクを使えるようになるたびに使うかで最高評価の三つ星に達することができるかと思いますが、いちばん難しい料理だけは、私にはこのやり方では三つ星にいけませんでした。で、実はランダムでいろんな効果が出る「おだてる」がかなり有効なんですね。たまに評価が下がることもあるのですが、評価が大幅に上がったり、バフがかかったりなど、プラスの効果が大きく、これを繰り返し使えばけっこうあっという間に最高評価に到達できます。いちど最高まで上げてしまえば、あとは適当に進めて大丈夫。

スケボーも料理も思うように動かせないことも多いのですが、だんだんと操作を理解できるようになるのとジャラが自分自身を理解していくのとが並行して進むのが面白いですね。

物語の主軸に女性がこの社会で生きること、そして母から娘へと受け継がれる呪縛とがあったり、求婚者たちの家父長制口撃に立ち向かったりと、フェミニズム的テーマもはっきりしていて、そのあたりもいいです。驚愕のラスボス戦と、自分のさまざまな側面を受け止めたジャラの最終フォーム、そしてそれを乗り越えたみんなの姿をぜひ見てみてほしいです。

あ、着せ替えでプログレスプライドフラッグデザインのジャケットを着たりもできます。

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