15世紀チェコを舞台にしたリアル路線オープンワールドRPG。カール四世が死去し、その子であるボヘミア王ベンツェスラウスとハンガリー王シギスムントが対立、ベンツェスラウスが幽閉されシギスムントがボヘミアの支配を強めようとしている、という背景での物語です。
主人公は、かつてシギスムントの進行で滅ぼされたスカリッツという村で鍛冶屋の息子として暮らしていたヘンリー。前作をやっていないので細かな経緯はわからないのですが、鍛冶屋の義父とは別にラジク・コビラ卿という血縁上の父親がいます。いまは若き貴族でありヘンリーの親友でもあるハンス・カポン卿のおともです。
ヘンリーはさすがに架空の人物ですが、作中に出てくる多くのキャラクターが実在の人物をもとにしているらしいです。私は詳しくないのでわからないのですが、街の風景や文化もしっかりとした専門的な考証を経ているようです。ということは、あのやたらと馬糞が落ちている道も、史実……?
実際にはベンツェスラウス王は暗愚か支配者だったというのが一般的な評価のようですが、ヘンリーはシギスムントの兵に育ての両親を殺害されており、またシギスムントよりもベンツェスラウスのほうがボヘミアの文化には神話的だったようで(途中で出てくるベンツェスラウスの部屋には写本も多かった)、作中ではシギスムント側が主に敵として描かれ、ヘンリーたちは仲間を集めてシギスムントに抵抗するための戦いをしていくことになります。
このゲーム、装備やクラフトがやたらと細かいのや、魔法や派手な技のないもったりとした戦闘が楽しいですね。兜をいきなり被ったりはできず、その下に一枚着たりしないといけなかったりします。
錬金術という名目で薬の調合があったり、鍛冶屋の子らしく鍛治ができたりするのですが、調合時には鍋を火にかけ、材料を挽き、砂時計を使って加熱時間を確かめて、……なんてことをいちいちしないとならないし、鍛治は鉄を熱して色合いで温度を確かめるところから始まり、ハンマーできちんと叩かないといけません。とにかく面倒くさく、そしてその面倒くささがとてもいい。
物語の最初、ヘンリーは仲間も失い、服も失い、お金も失い、愛馬も愛犬も行方不明、親友とは喧嘩別れ、という何もかも失くした状態で始まるのですが、そこから家に住まわせてくれるひとを探し、コツコツと薬草を摘んで薬を作って販売し、どうにか生活を立て直すというあたりが本当に楽しかったです。いろんなレビューで同じことが言われているようですが、自由に行動ができるようになったあとの最初の大きなイベントに進むまでに、長い時間をかけていろいろしてしまう。
そのせいか、後半になるとすでに多くのスキルがカンストしてしまっていて、ヘンリーの成長が頭打ちになってくるのは、ちょっと寂しかったです。鍛治と錬金術のスキルはあっという間に上がるし、馬と犬のスキルも勝手に上がるので、あとは夜な夜なお酒を飲んで飲酒スキルを上げてお酒に強くなろうとしたり、くらいになる。飲酒スキルなるものがあるのがすでにちょっと面白いですが。
戦闘は、相手と何度も打ち合いながら、隙を見て攻撃をするチャンバラ風のシステムになっています。攻撃箇所を頭部、右、左から選ぶことができ(武器によっては突きもある)、相手がどこに打ち込んでくるかを見ながらこちらも構えを調整しながら戦う感じ。ノーマルモードだと大勢との戦いでも攻撃は一人ずつにしてくれるのですが(時代劇の殺陣みたいに)、とはいえその一人もどんどん切り替わるので、スーパーパワーとかを持たないちょっと戦い慣れしているだけの一般人のヘンリーは、盗賊3人くらいに囲まれるとあっという間にピンチになったりします。
慣れるまではけっこう難しいですが、慣れたら単なるボタン連打とかではない戦闘が楽しいです。ハイスピードなアクションではないから、目がぐるぐるしたりもしません。
初期のヘンリーは弓も下手で、構えていてもずっとぶるぶるしていてぜんぜん当たらない、とかもよかった。ヘンリーの成長を味わうゲームですね。
クィア描写は薄めですが、ちょい役に同性のパートナーとのエピソードがあるおじさんがいたり、ヘンリー自身も男性とのロマンスができたりというのはありました。
お気に入りのキャラは、ボウガンお嬢さまのローザと、マリから来た知識豊富なお医者さんのムーサー、酔っ払い傭兵のクビエンカ。クビエンカはずるいですね。あれ、人気キャラにならざるを得ない振る舞いじゃないですか。
下ネタセリフが多い、女性蔑視的な発言をするキャラがいる、動物が頻繁に死ぬ(そして皮を剥がれて解体されたり、ヘンリー自身がそうしたことをできたりする)、殺し合いや血みどろの描写が多いなどがありますので、そういうのを避けたいかたはプレイしないほうがいいかも。動物は、私も初めて見たときにはぎょっとしました。愛犬のマットは可愛いです。餌をあげたり撫でたりできます。そしてたまに勝手にいなくなる。
西洋中世風ファンタジーではない、ガチ西洋中世RPGをやってみたいかたにはおすすめです。
贅沢を言えば、この方向性でキャラメイクができたり、もっとメインクエスト以外にも大きめなストーリーラインがあったりするゲームがいずれ出たら、さらに嬉しいですね。