https://www.netflix.com/jp/title/81607752?s=i&trkid=0&vlang=ja&clip=81901393
LGBTQ+のコメディアンたちの歴史を語るドキュメンタリー。歴史を通して見ると、LGBTQ+に対する攻撃や抑圧が、本当に何度も波のように繰り返し起き、けれどそのたびに先人たちがそれを乗り越えていまのこの社会を作ってきたのだなと感じます。
そして、レーガン時代のアンチ同性愛のレトリックが本当に本当に現在のアンチトランス言説とまるで同じで、いや、そうだとは何度も聞いていたし、読んでいたけど、改めてびっくりします。同じ暴力・抑圧のもとに置かれている。
それでも、このドキュメンタリーに登場する人々は、自らのアイデンティティを示し、マジョリティがマイノリティを嘲笑うときの薄っぺらくクリシェ的なギャグとはまったく違う、個性的で、リアリティのある笑いを見せてくれる。それが本当によくて、「私たちはこんなにも楽しい存在なのだ」と力強く感じます。いや、実際のところ面白いですよね。私は、これまで出会ったクィアな人々はみなすごく面白いひとに感じる。シスヘテロなひとが集まった場ではそういう面白さはフルには出てこなかったりするから、それを味わえるだけトランスでいるのはお得だなとも思います。
現在、英語のオンライントランスコミュニティでは、アメリカ在住のひとたちの恐怖の声が本当に強くて、最近の殺人事件*1や暴行事件*2のこともあるし、もし大統領選でトランプが勝ったら医療アクセスが遮断されるかもしれないと怯えて、「医者を頼らず自分たちで必要な薬品を手に入れて貯めておくようにしよう」みたいなやりとりがなされたりしています*3。
その恐怖はどうしようもなくリアルで切実なもので、そして国内でもいま司法での進展をきっかけとしてバックラッシュがさらに激化していて、私もかなり恐怖を感じながら暮らしていますが、それでもこのドキュメンタリーを見ることで、「私たちは笑ったり支え合ったりしながらこの恐怖と暴力さえ乗り越えられるかもしれない」と感じさせられました。そんなふうに生き延びた先人が確かにいるのだから、と。
いくつかすごくかっこいい言葉もありました。「この生き方を自分で選んだ？ 違う、選んだんじゃなくて私たちは選ばれし者なんだ」みたいなの、本当にかっこよくて真似したいです。「LGBTQ+のネタが受けなくなるときが来るなら、そのときが私たちの勝利のときだ」みたいなのもよかった。どちらも記憶を頼りに書いているので、細部が違うかもしれないけど……。
コメディとは違うけど、最近は、私も私で自分のトランス的な体をもっと楽しみたいなという気持ちが強まってたりします。オンラインでの攻撃の口実にされたことなども（何度も）あるものの、もともと私自身は自分の身長も声もその他の特徴もけっこう好きなんですよね。
服装などもフェミニンさを減らしていってみたいし、声も、そもそもそんなに可愛い声になりたいとかという気持ちはないのですが、このところはむしろ逆に「せっかく低めの声なんだし、どうにかチバユウスケみたいな声で歌ったりできないものか」とか思ってたりします。まあ、私はカラオケとかまったく行かないし、そもそも歌なんて歌うことが家事をしながら口ずさむ以外にはないから、練習も実践もする機会がないのだけれど。
ともあれ、もちろんどうしようもなく落ち込んだり傷ついたり、そのせいでディスフォリックになることもあるし、心折れることも多いけれど、少しずつでも「私たちがこんなに面白いんだ」という感覚でやっていけるようになりたいし、していきたいですね。
*1:いくつか殺人事件は起きているけれど、やはりいま多くのひとが恐怖とともに話題にしているのは先日の14才の女の子が殺され、バラバラにされた事件。
https://www.them.us/story/pauly-likens-trans-teen-remains-found-pennsylvania
こちらは被害者の女の子のお父さんへのインタビュー。
https://www.wkbn.com/news/local-news/sharon-news/father-speaks-about-the-murder-of-his-14-year-old/
日本語でもいくつか記事になっているものの、私の調べた限り被害者が女の子であったことを明示した記事は見当たらなくて、私はそこに問題を感じる。
*2:例えば、周囲のひとを不安にさせたくないからと男性用トイレを使用していた高校生のトランスの女の子が同級生にいきなり殴られて顎を骨折する大怪我をした事件。
https://www.advocate.com/crime/minnesota-trans-girl-assaulted-school
