あれこれ日記

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【ネタバレあり】ふみふみこ『楽園をめざして』

楽園をめざして - ふみふみこ / 第1話 別人 | コミックDAYS

先日、最終第三巻が出て完結しましたね! 第一話から最後までずっと本当に素敵な漫画でした。

私自身が双極症の当事者で、診断を受けてからずっと通院を続けていて、それ以来ずっと周りのひとにたくさん迷惑をかけ、たくさん助けてもらいながらなんとか暮らしています。(最近は長期間にわたる仕事の話が来たときには基本的に最初に伝えるようにしてもいます)

この漫画は、作者さんも自身が双極症であることをオープンにされていますが、その大変さもある種の滑稽さも含めてかなりリアルで、そこに過剰な悲劇性も過剰な楽観視もない感覚がとてもよかったです。

そのうえで、双極症を単に個人の内的な苦しみとするのではなく(鬱エピソードにおける症状のひとつとして、文字通り苦しいのは苦しいのですが)、むしろ人間と人間の関係のあり方のなかで双極症を捉え、しかも最終的にそれが「四人のお父さんと一人のお母さんがいる」という新しい関係性の起点のひとつとなっているのが、甘やかしすぎないけれど確かな希望だと感じられました。

私は双極症のなかでも躁がそこまで強く出ない2型というタイプなので、本作で描かれるほど極端なことはあまりしなくて、「すごく読書が捗る」とか「なんだかいつもより元気で、外出したときに一度にいろいろな用事が済ませられる」とかくらいなのですが、それでも「そうそう、調子よくそんな感じですごして、不調のときに後悔したりするよね!」と微笑ましく読みました。

双極症を勉強するための漫画や当事者のエッセイ漫画は見かけますが、こんなふうにフィクションで、かつ当事者が読んで楽しめる双極症表象ってかなり少ないので、本当に貴重な作品だと思います。描いてくれたことに感謝したいくらい。

双極症当事者が楽しめる双極症描写のフィクションで言うと、ぜんぜんジャンルが違うけれどMarvelのThe Unstoppable Wasp(2018-2019)もおすすめです。

双極症女性ヒーローの話ですが、日本の漫画に比べてかなりマイノリティ表象に力を入れているDCやMarvelでも、主人公がリアルに描かれた双極症というのはほかにあまり思いつきません。「不安定な恐ろしい二面性」みたいな偏った描き方のキャラクターはわりと見る気がしますが。作者さんによるとアロマンティックでもあるらしいです。女の子だけの科学者チームが出てきたり、女性同士の恋愛があったりもします。