SkyシアターMBSにて。新しくできた劇場ですね。というか、建物自体が新しい。
ルヴォーさんの演出作品というと、2008年に宮沢りえさんと堤真一さんの『人形の家』を見て以来。今作ではハムレットを市川染五郎さん、オフィーリアを當真あみさんが演じていました。
『ハムレット』を見るのは2年ぶりかな。前に見たのは吉田鋼太郎さん演出のもの。その前に見たのは2001年か何かの蜷川幸雄演出・市村正親主演のものを2005年ごろにDVDで見たとかでしょうか。
『ハムレット』はハムレットが(ホレイショの人物評に反して)普通に酷い人間で、最後も自業自得というか、何なら「オフィーリアやガートルードの分ももっと苦しむべきでは……?」と感じてしまうところがあるのを、いったいどんな感じで処理するのかが、個人的には気になるところです。朧げな記憶では、市村さんのハムレットはけっこう愛嬌があってダメなんだけど憎めない感じになっていたように思います。
本作では、ジェンダーのテーマをわりと全面に出しているように感じました。クローディアス、ハムレット、レアティーズあたりは延々と復讐の連鎖を続けているわけですが、クローディアスの罪をなぜかハムレットはガートルードに転嫁するし、男性は死者を含めて権力と名誉の文脈で語られるのに対して、女性たちは所有と貞淑の文脈で語られて、私には全体的にホモソーシャルな世界という印象が強いんですよね。ハムレットとレアティーズの一騎打ちでも、名誉に関わるのはレアティーズの父の死であって、オフィーリアの死ではないし。
最後にノルウェー軍が攻めてくるあたりも、男性たちのじゃれ合いのような殺し合いの果てに単に新たな支配者に部隊を譲って終わって、虚しい印象がある。
でも本作では、ノルウェー軍がかなりデンマークとは明白に違う存在として視覚的に表現され、王子も含めて演じているのは女性たちになっていて、それでもけっきょく虚しく歴史は続いていくのかもしれないけど、どこかちょっと「これまでのカラーを一気に捨て去る」感じがあるのが印象的でした。
それにしても、当時の評価はわからないけど、現代的な視点ではハムレットって優しくも高貴にも感じられないと思うのですが、そのハムレットをやたらと慕って、優しさや高貴さが失われることを嘆くホレイショって、どこかハムレットに恋愛的な感情を持ってそうに見えますよね。そう考えると、最後にホレイショだけ生き延びるのもなんだか面白く感じます。
俳優さんは、ガートルードを演じる柚香光さんがすごかったです。何がすごかったって、あらゆる瞬間で姿勢も所作も美しすぎて、「こういう美しさって生身の人間で達成可能なんだ……」とびっくりしました。當真さんが演じるオフィーリアの心が壊れたあともよかったですね。ガートルードに声をかけられたときとかに一瞬体を緊張させて振り返るところとか、記憶に残りました。市川さんも、さすが歌舞伎のひとだけあって、体の芯がしっかりしていて、安定感が常にすごかったです。