あれこれ日記

趣味の話や哲学のこと

高井ゆと里 編『トランスジェンダーと性別変更』(岩波ブックレット)

https://www.iwanami.co.jp/smp/book/b641561.html

とてもいい本でした。戸籍上の性別変更に関わる性同一性障害特例法の不妊化要件に最高裁違憲判決が出たことを受けて、特例法の成立の背景や問題点、今後考えていくべきことなどが活動家、弁護士、法学者、医師のそれぞれの観点から簡潔かつ明快に説明されています。

「たぶんおおよそ知ってる話が多いかな」と思いつつ読んだのですが、国際人権法のあたりの話はあまり知らず勉強になりました。あと「日本語だとトランスジェンダーの医療のまともな情報がないな」と思っていたけど、中塚さんのこの本での解説はスムーズな導入になりそうですね。長くトランスジェンダーの医療に携わり、ほかのところでもいろいろと解説をしてくれているよく知られた専門医のかたですが、どういった医療が、なぜ、どんなふうに必要なのかという話をわかりやすく語ってくれています。

それにしても、本当はこういう説明をきちんと新聞などでちゃんとした専門家に取材して紹介してほしいところです。なぜ高井さんや周司さんのような当事者が身を削り、時間を削りして専門家やメディアの代わりにがんばらされなければならないのか……。岩波がこういうブックレットを出してくれたり、一部の出版社がきちんと情報を発信しようと努めてくれているのはありがたいですね。